札幌と道東を短距離で結ぶ石勝樹海ロード。この国道が開通するまで、日勝峠へは平取から沙流川を北上する必要があった。それが夕張から山奥を突ききって、日高町へ抜けることができるようになった。こんな山奥にこんな立派な道路があると、最初は目を疑ったものだ。新しい道路なので、大変整備されている。しかし、さすがにトンネルは多いが、カーブも多い。そのカーブも高速コーナーなのだ。雨の日は、スピンする可能性もある。こんなところで事故を起こしては助けにも来てくれないだろう。運転は整備具合の割に慎重になる。
この山奥のさらにはずれた場所にニニウという地名の場所ある。今は誰も住んでいない幻の村である。日本最後の秘境と言われるが、その場所に向かうには、通称、鬼峠と呼ばれる厳しい峠を越えなければならなかった。それでもそこの住民がなかなか村を離れなかったのは、そこは鉄道が通る予定だったからである。今の石勝線であるが、皮肉なことに石勝線が開通したのは、林業で生活ができなくなり住人が待ちきれずにニニウから離村した後であった。そして、さらに後にこの石勝樹海ロードも開通している。そのため、単に山奥を通り、日勝峠へ向かう目的だけのような道路となった。
石勝樹海ロードは、トラックの往来も多い。札幌と釧路を結ぶ長距離トラックも多いであろう。 大抵、早く目的地に着くために、スピードを上げて走るが、積載量が多いので、登りになると途端に遅くなり、制限速度の半分以下のスピードになってしまう。そして、黒々としたディーゼルの排気ガスを大量に吐き出す。少し離れて走っていても、白いボディーの車は少しくすんだ色になってしまうのだった。また、営業で何度も往復していると思われる商用バンは、道を熟知しているらしく、そんなトラックをタイミングよく次々パスしていく。どんなに性能の良いスポーツカーでも、この道では、商用バンにかなうものはないかもしれない。
日高町の交差点で久々の信号となる。人が住んでいる気配もそこまでのワインディングロードにはない。日高町の道の駅で少しの休憩をしたら、再び山奥へ入っていく。日高町までの道路と違い、旧来のやや路肩の細い道である。日勝峠に近づく頃、急にカーブがきつくなり、一気に峠へ登り詰める。頂上を超えた後、峠のドライブインがある。ここからは十勝平野が一望できる。雄大な眺めを堪能した後、高速コーナーの下り坂を下りていく。最後のカーブが終わっても、下り坂は続く。ほぼまっすぐと下っていくその先には、狩勝峠から帯広へ向かう国道がある。右折した後、帯広へは単調な道のり。山道のひやっとした空気とは違い、十勝平野の暖かい空気をかき分けるように進む。
帯広に近づくと道路は2車線になり、信号が急に多くなる。自動車学校や工場、ガソリンスタンドなどが道路の両端に陣取っている。十勝平野のど真ん中に広がる都市、帯広。少しの間併走する高架した線路は、右にそれ、中心部がそこにあることを知らせる。何も邪魔する地形がないその街は、きれいな碁盤の目になっている。同じ碁盤の目である札幌や旭川と違うのは、線路が45度の傾きで街を横切っていくことだろう。
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