特に好きなのが道東。北海道の東側の釧路や根室を含む地方。食べ物がおいしいから? いや、北海道はどこでもおいしいところがあり、道東に限ったことではない。風景が違うから? いや、同じ北海道だから、特別変わったものがあるわけでもない。日本の東の端、それだけかもしれない。
道東へいく途中、襟裳岬によるのも好きだ。今は、石勝樹海ロードが開通し、日勝峠を短距離で横切る国道が走っていて、道央と道東は少し近いものになった。それでも急がないときは、襟裳岬を通って道東へ行く。仕事が終わり、夕方に札幌を出発すると、ちょうど真夜中に襟裳岬に着く。そこの駐車場で、泊をとる。しかし、大抵天候が悪く、霧が出ていると警笛がなり、とても眠れたものではない。そこで、百人浜まで移動することになることが多い。百人浜には、カーキャンプ場があり、100Vの電源も備えているらしい。そこではテレビを見たり、電子レンジで調理した食事で快適なキャンプができるという。それがキャンプというのかは疑問だ。当然、そんなところには入り込まずに、国道からキャンプ場へ入るところにある駐車場に車を止める。先ほどの襟裳岬とは大違いで、あれほど霧が濃かったり、嵐が吹いているときでも、ここは割と静かである。海に向かっては何もない風景で、ゆっくり朝まで過ごすことができる。
百人浜から北上すると黄金道路と呼ばれる道となる。かつては道路は通っておらず、陸の孤島だったらしい。岩がむき出しの海岸沿いの風景は、いかにも工事が困難なことを感じさせる。黄金を大量に費やしたほどお金がかかった工事だったと言われているとこから由来する名前である。トンネルを抜けるとまたトンネルがあり、ときどき小さな街がある。海と岩でできた山に挟まれたわずかなスペースに街がある。さらに海側には小さな港があり、街と港の間に国道が走っている。その間を車はあっという間に通りすぎるのである。その一瞬に小さな港町の生活を垣間見ることもある。静かな時間の流れを引き裂く車たちが罪に思える。
そんな小さな港町の一つで、車を止めてみる。車では一瞬で通り過ぎる街並みも、自分の足で歩けば、結構な散歩になる。家は決して古いものではなく、現代風の作りのものが多い。すきま風が入るような家では決してない。少し奥に入ったところに学校があった。小学校と中学校が一緒になったものだろう。学校も新しい校舎のようだ。小さなグラウンドがある。休日なので、当然その小さなグラウンドも静まりかえっている。近くに小型の消防車も置かれてあった。そのジープのような赤い車がおさまる小さな小屋がこの街の消防署というわけなのだろう。
車は古い小さなトンネルや真新しい大きなトンネルをくぐりながら、どんどん北上していく。やがて、十勝平野の南端に出る。岩肌を見せる山々は左に遠く見え、やがて、少しのアップダウンを繰り返す道となる。
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