ウポポイは本当に「ガラガラ」なのか?
2020年、アイヌ文化復興・創造の拠点として華々しく開業した「ウポポイ(民族共生象徴空間)」。しかし、開業から数年が経ち、SNSなどでは「ウポポイはガラガラ」「人がいない」といった声も散見されるようになりました。YouTubeを見ても、ウポポイの現状を伝える動画が多くあるようですが、旅系YouTuberが楽しんでいる動画はほぼなく、それらの動画の再生数は低迷しているものばかりです。
Googleマップは、さすがにクチコミ投稿は多く、5000を超えます。近くにあるマリンパークニクスが8000なので、結構な書き込みがあると思います。ただし、ウポポイの投稿の内容はネガティブなものが少なくないのが特徴です。だから投稿数が多くなっているのもあるでしょう。
修学旅行・教育施設としてのイメージ定着
ウポポイが担う重要な役割の一つに、アイヌ文化の教育的側面があります。実際、多くの学校が修学旅行や校外学習でウポポイを訪れており、その役割は着実に果たされていると言えるでしょう。
しかし、その一方で「修学旅行で行く場所」「勉強する場所」というイメージが強く定着しすぎた可能性も考えられます。来客者の20〜25%が教育旅行という資料があります。一般の観光客、特にカップルや友人同士のグループにとっては、「わざわざ休日に訪れる場所」という選択肢になりにくいのかもしれません。
近隣の観光施設との連携不足?
ウポポイが位置する白老町は、登別や洞爺湖といった北海道を代表する観光地に隣接しています。とはいっても、それなりの距離があります。しかも自治体が違うのでタグを組むのは難しそうです。
白老町には、他に観光地はないのですが、白老牛や虎杖浜たらこ、マザーズのたまごなど、食に魅力があります。ただし、それらはアイヌとは関係がないので、ウポポイと組み合わせることはできません。
阿寒湖のアイヌコタンは、阿寒湖の湖畔にあります。遊覧船に乗り、おみやげ街をまわっているとイコロがあるという位置関係です。「ついでに入ってみる?」というノリで利用することも考えられます。気軽に入ったのなら特に十分に満足の行く施設です。
そもそも「アイヌ文化」への関心が低い?
アクセスや他の施設との比較以前に、より根本的な課題として「そもそもアイヌ文化そのものへの関心が、まだ一部にとどまっているのではないか」という視点も考えられます。
多くの人にとって、アイヌ文化は歴史の教科書で触れる程度の知識であり、自ら時間とお金をかけて学びに行きたい、体験しに行きたいという強い動機付けに繋がりにくいのかもしれません。ウポポイの存在意義は、まさにその関心を掘り起こし、文化の魅力を伝えることにありますが、現状ではその魅力がまだ十分に届いていない、という見方もできます。
アイヌ民族の「働く場」としての役割
これまで観光客の視点からウポポイを見てきましたが、もう一つ忘れてはならない重要な側面があります。それは、アイヌ民族にとっての「雇用の場」としての役割です。
ウポポイは、多くのアイヌの人々がスタッフとして働き、自らの文化や歴史を語り、伝統的な技術を披露する場所です。これは単なる雇用創出にとどまりません。伝統舞踊の演者、工芸品の実演家、解説員といった仕事を通じて、文化そのものが次世代へと受け継がれていく「生きた継承の場」となっているのです。
来場者数の多寡とは別の次元で、ウポポイはアイヌ民族の生活と文化の基盤を支えるという、計り知れない価値を持っていると言えるでしょう。
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