中国語の不思議

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中国語って、文字ありきの言葉だなぁと気になっていました。同じリズムで漢字に割り当てられた音を一つ一つ発音していく言語。漢字がなければ存在できないような言語になっています。これが自然に生まれた言語とは思えないのです。

漢字で表されたものを発音するので、他の言語のように自由に活用することができません。日本語だったら「話す」の過去形として「話した」と活用します。英語でも「speak」「spoke」などと発音を変化させて時制を表します。中国語は、活用ができないので、過去形などの時制がないそうです。文脈から判断するみたいです。

他の言語を使う人からすれば、なんと不便そうな言葉だなぁと思うこともあるでしょう。

しかし、これには中国語の成り立ちが関係しているのでした。「殷」時代に作られた「甲骨文字」が最初で、当時は占いに使われていました。結構知られた話ですよね。漢字は神のメッセージを表記する文字だったのです。そして、「周」の時代には、他の部族との「契約」に使うようになりました。

広い中国大陸で、いろいろな言語を使う民族が入り乱れていたのですが、漢字という文字を使うと発音はできなくても、意味を共有することができるというものです。

今でも、同じ漢字を使いながら中国国内で地域によって発音が違うように、民族によって違う発音をしていたのでしょう。でも、文字を共有の意思疎通手段として便利に発達していったわけです。

言語が異なる民族同士が交流の必要があるときに、独自に発達した言語をピジン語というのですが、中国語はある意味そういったものといえそうです。文字によるピジン語というわけです。

だから、自然に話される言葉に文字を割り当てたというよりは、漢字ありきで構成されているような言語に感じるのは、そもそもそういう言語だからなのでした。

漢字が入ってくる前の日本にも日本語があったように、漢字が使われる前の中国にもそれぞれの地域の自然な言語があったのだろうと思います。ただし、文字がないので記録としてわからないだけです。中国語は、人工言語の一種と考えることができるのではないでしょうか。

古代ローマ帝国は、ラテン文字を使ってラテン語を話していましたが、だんだん方言が発達していき、それぞれイタリア語とかフランス語とかになっていきました。文字は同じラテン文字(アルファベット)を使いながら、綴りも発音に応じて変化していきました。意思疎通がだんだん難しくなっていったのです。

その点、中国は、会話ができなかったとしても、中央の司令が文字で伝わっていきます。中国が統一できているのは、漢字のおかげという考え方もできそうです。いまだに漢字の簡略化をして統一していますが、発音は統一していません。

もともと漢字圏だった朝鮮やベトナムは、漢字の使用をやめました。すでに韓国では、漢字を見ても読めもしなければ意味もわからない人が増えているそうです。もともと識字率が低かったから漢字廃止をしたので、そこは大きな問題ではないそうです。

旧ソ連の国で、キリル文字からラテン文字に変更した国がいくつかあります。日常会話には支障はなく、文字だけを入れ替えました。トルコやモンゴルなど、文字を総入れ替えした国は他にもあります。しかし、国の中で同じ言葉を話していれば、問題ないわけです。

中国が漢字を廃止したら、意思疎通ができなくなって、分裂の道をたどるのでしょう。今でさえ、会話による意思疎通ができないので、接している香港と広州でさえ、ビジネスをするために通訳が必要だといいます。

かつてのローマ帝国よりも情況は難しそうです。漢字があって成り立つ国という中国は、かなり特殊といえそうです。中国語という言語自体が政治的に大きな意味を持つというもの。言語って不思議ですよね。