霧の港町と霧多布湿原

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 十勝平野を東に抜けると、再び山の中へ。白糠丘陵を抜けると釧路へと辿り着くわけだが、釧路湿原を背後に従えたその街は、霧の街と称され、晴れの日が少なく、肌寒い。ここでは20度を超えたら暑い方で、そんな中を地元の人たちはTシャツで歩いている。また、花火大会も霧ごときでは延期や中止はしない。そのため、霧の中の花火大会となる。音だけが空を駆けめぐり、頂点で光を放つが、霧のために空全体が明るくなる。どんな花火が打ち上げられているのかはさっぱりわからない。意味があるのか? 花火大会をすること自体が意味があるのではないか。そんな霧の街を愛する人たちの力強さを感じる。

 太平洋に面したこの街は、海産物が魅力の街でもある。炉端では新鮮な魚介類を目の前で焼いてくれ、素朴に醤油をかけて食べる。酒も飲みたい。飲酒運転は厳禁なので、必然的にここで一泊となる。炉端で釧路の味を堪能した後は、釧路港に浮かぶ漁船を眺めるのも風情がある。あるいは幣舞橋や出世坂を散歩するのもいいだろう。カモメが飛び交う旧釧路川の海の匂いも旅の疲れを癒す。

 朝、やはり霧である。何度も釧路には来ているが、朝は霧であることが多い。霧の中、ロータリーになった交差点を駆け抜ける。旭川のロータリーのように信号はない。初めてこの交差点を通過するときは、とても緊張したのを覚えている。他の車と接触するのではないかと心配になりながら、しかもスピードを殺さず、流れに合わせる。教習所では、出口に向かって、スムーズに流せばいいと言われた。慣れてしまえば、確かにその通りで、今では苦には思わない。

 国道から厚岸に向かうのもいいが、春採から昆布森を経由する道もいい。交通量も少なく、のんびり森林浴気分でドライブができる。一度国道へ合流し、厚岸で再び海側へ。霧多布へ行く道がある。霧多布湿原にある琵琶瀬の展望もいい。この辺りの観光地で共通して食べられる「いももち」「かぼちゃもち」も素朴ながら味わいがある。

 ここもライダーが多く羽を休める場になっている。バイクに乗ってここに来たときも、同じバイク仲間ということで、知り合いでもないのに話しかけたり話しかけられたり。秋田から来た女性ライダー。一人旅をしている最中とのこと。女の一人旅である。きれいな女性だった。そのことを素直に告げると、「秋田美人よ」と笑って答えた。住所と名前を紙に書き、「現像したらここに送ってね」と手渡してくれた。赤と白のツナギの女性は、レプリカバイクにまたがり、軽快な音を残し湿原の道路の中へ吸い込まれていった。